日本の現状を分析して将来の経済政策を提言する。基本的には政策提言なので、この本を読んだからといってなにか自分が変わるわけではない。しかし、大量の分析をもとにした筆者の提言は説得力がある。
現状分析として、日本は極端な人口減少・高齢化社会になっている。その結果、非常に大きなデフレリスクにさらされており、このままでは経済縮小は避けられない。それを克服するためには高付加価値・高所得資本主義に変わっていかなければならない。そのための政策のキーは「最低賃金の引き上げ」。それによって、生産性の向上、輸出の増加、小規模企業の統合を狙う。最低賃金を引き上げると失業率が増加するというよくある反論については、イギリスでの実例を引き、生産性の低い企業が経営できずに倒産するが市場がある限り、倒産した企業は統合され、労働者は統合された大企業で働くことができるので給与も向上し失業率は上がらない、と反論する。
私も、日本の現状は、縮小市場における過剰な競争による低賃金化、それによるデフレが将来的なリスクであると考えており、筆者の考えには共感できる。ただ、それを実現するためには「最低賃金の引き上げ」を主張している政党に投票したいのだが、現状はほとんど選択肢が存在しない。