自転車整備に必要なケミカル類としては大きく4(+1)つに分けられる。
- グリス
- チェーンオイル
- スプレーオイル
- デグリーザー
- ワックス
1. グリス
グリスとは、油を保持するもの(鹸化剤)と油(潤滑油)が混じったペースト状のものをいう。
用途としては3つ。ベアリング用、アッセンブル用、表面潤滑用。
ベアリング用とはボールベアリングに注油するもの。ベアリングの内輪、外輪、ボールの間に油を保持するために、単なる油ではなくグリス(保持剤と油が混じったもの)を用いる。
自転車用としてはデュラエースのグリス(通称 デュラグリス)があれば、ほぼ万能。ホイールによっては回転が軽い「カンパグリス」が適する場合もあるが、とりあえずはデュラグリスで良い。
また、初心者のうちは、グリースアップが必要な箇所はプロの定期メンテに依頼するのも手だ。グリスが必要な箇所は閉鎖箇所なので、分解→注入→組み立てという手順が必要となる。その意味で、グリスが重要になってくる場所は、ハブ、ヘッドパーツ、ボトムブラケット。
グリスのもうひとつの用途が、アッセンブルオイルである。自転車は、カーボン、鉄、アルミなど異なる材質で組み上がっている上に、雨や汗やドリンクなどがかかりやすく、そのために錆びやすい。ネジが錆びついて外れなくのを防止するため、また、締め付けを滑らかにして必要な締め付けトルクが掛かるようにするために、ねじ山や接触面にグリスを塗ることがある。さもなくば、ネジが外れないことを経験するだろう。
締め付けトルクがかかるねじ山には、とりあえずグリスを塗布しておけば間違いないが、滑ったらダメな場所(例えばシートポストやハンドル周り)については、潤滑性のあるグリスではなく固着性がある(でも分解もできる)アッセンブルペーストが最適な場合もある。しかし、最初は、ネジ・組み立て部にはグリスを塗っておくぐらいで調度良い。グリスがあると緩むと思うかもしれないが、それで緩むようなら組み立てがオカシイと思うぐらいで調度良い(油があるほうが、乾いているよりもよく締まる。詳しくはネジ締結理論を参照)。
表面潤滑用とは、ブレーキワイヤや変速ワイヤの表面に塗るもの。単に油を塗布するよりも保ちが良くなる。
2. チェーンオイル
その名の通り、チェーン専用オイル。
チェーンオイルは他のオイルは異なり負荷が高く、潤滑性が求められ、かつ、耐久性が重要になる。ここだけは自転車のチェーン専用が望ましい。
大き、ドライ系、ウェット系に別れる。個人的にはウェット系が好きだ。
ドライ系は、汚れを呼び込まず、チェーンをきれいに保てるが、耐久性に劣る。だいたい200km以内。
一方、ウェット系は汚れを呼びこんだり黒く汚れたりするが、長距離を走っても劣化が少ない。 また、雨にも強い。
チェーンは常に駆動負荷がかかるためにチェーンオイルは、基本的に粘性が高い。また、金属表面への付着性が高く設計されている。基本的には他のオイルとの共用はおすすめできない。
3. スプレーオイル
チェーン以外の摺動部には、よりサラサラしたオイルを使う。スプレー式では無い液体オイルでも機能的には問題ないのだが、スプレー式の方が自転車のような複雑な機構の場合は使いやすい。普通のスプレーではなくストローが付いていて局所噴射、逆さ噴射が可能なものが望ましい。
スプレーオイルは、ワイヤーなどの摺動箇所、ワイヤーやプーリー、変速機のリンク、ブレーキメカのリンクなどの軽負荷ベアリングに使う。基本的にはグリースが油を保持しているはずだが、軽負荷ベアリングや摺動部においてはグリーズの保持成分を洗い流さずに摺動性分を足してやるイメージで。
ハブ軸やヘッドパーツ、ボトムブラケットなどの高負荷な箇所のグリスには、グリスの流出防止、潤滑剤保持力確保のために、スプレーオイルは噴射しないほうがいい。
油の基材の性質によって、ミネラル系、シリコーン系、テフロン系に分かれるが、正直、あまり差を感じない。
また、スプレーオイルには2種類ある。オイルをスプレーして潤滑剤が残るタイプ、汚れを落とすことを主眼としてあまり潤滑剤が残らないタイプ。後者の代表的なのが KURE 5-56で、これは自転車用としては適さない。しっかり油が残るタイプが適する。
また「ラスペネ」などの水置換型スプレーもある。水置換型スプレーは、隙間や、水と金属の間、金属と金属の間に浸透し、錆止め、易緩などの効果を発揮するが保持力は弱い。雨の後などは、水置換型スプレーを噴射して水を追い出すことはサビ防止のためには有効だが、耐久性を保つために、より保持力の高いスプレーを併用するのが好みだ。
4.デグリーザ
チェーンに油を塗布する前に汚れた油を落とすのがデグリーザだ。チェーン以外の場所に掛けるとグリースごと流れてしまうので、掛けてはならない。
一番安いやつで良い。スプレー式の方が作業はやりやすいが、液体式のほうが無駄は減らせる。
5. ワックス
注油が終わったら、付着した油をウェスで拭いて、フレームにはワックスをかけてあげよう。汚れが落ちやすく次からのメンテが楽になる。
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