カンブリア紀に動物種が爆発的に増えた現象、通称「カンブリア紀爆発」について、それがなぜ起こったかという原因についての自説を述べる一般向け科学書。
ポイントは2つ。
一つ目は、カンブリア紀に動物種が爆発的に増えたのではなく、それまでにも動物種は分化していたが、カンブリア紀に、一斉に外殻を獲得したので化石に残るようになった、ということ。
二つ目は、なぜ種々の動物が外殻を獲得する必要があったかというと、ある生物が目を獲得して、効率的な捕食者として急激に進化したから。その生物とは、三葉虫であり、カンブリア紀から古生代にわたり多いに繁栄してたくさんの化石を残している。また、捕食者が目を獲得したことにより、被捕食者は外殻と身を隠すための色を獲得したとも述べている。色の化石は見つかりづらいが、カンブリア紀の生物の一部の構造は構造色を作る出すことも、著者は発見している。
また、外界と洞窟環境を比べ、光という刺激や目という受容器官による生存競争が進化を強力に加速することについても科学的に述べている。
残る疑問は、なぜ、カンブリア紀に三葉虫が目を獲得したのか、そして、三葉虫以外の動物はどのように視覚を獲得したのか、ということだ。
一つ目の疑問に対してはカンブリア紀に太陽から降り注ぐ光量がなんらかの原因で増えたことがわかっており、それが刺激となったと推測されている。その原因は、藻類の発生サイクルから太陽系が銀河腕を通過することによる天体由来の気象変動まで様々な推定がなされている。
本書の論旨は明確だし、非常にシンプルだ。それを述べるには、ハードカバーで2200円という形態は、やや文章が冗長になってしまっている感がある。内容がとても面白いだけにそこだけが残念である。
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